催眠術Ｑ＆Ａ「催眠術で記憶を消せるのか？」
催眠術に関する素朴な疑問にお答えします。
催眠術で記憶を消せるのか？
最初に、答えは「ＮＯ」です。
一時的に忘れさせることはできますが、記憶そのものを消すことはできません。
テレビでは名前を忘れたり、特定の数字を忘れたりという映像が流れますが、あれもその時だけ思い出せないのであって、解かずに放っておいてもその内に思い出します。
最近でこそあまり質問されなくなりましたが、以前は催眠療法（ヒプノセラピー）での問い合わせでよくありました。
だいたいは、「恋人と別れてとても辛い、こんなに辛いなら付き合っていた記憶そのものを消して欲しいのですができますか？」というような内容です。
誰でも人生の中で辛い経験があり、その記憶を消すことができたら楽になれるのに、と思うことってありますよね。
もちろん「できません」とお答えします。
でも、そこから説明をしてセラピーを受けるかどうかを選択してもらいます。
記憶を消そうとすることが記憶を強化している
本人は必死に思い出さないでおこうとしたり、思い出しても別のことを考えようとするのですが、実はそれが記憶に焦点を当てより思い出しやすくしています。
「〇〇のことを絶対に頭に思い浮かべないでください」と言われたら余計にその事が頭に浮かんでくるように、記憶を消そう、忘れようとすることで逆に思い出しやすくしているのです。
セラピーでは催眠術とは逆の視点から考えることが大切なのですが、逆に自分からネガティブな感情に浸ることが一つの解決方法になります。
例えば、1日の中で時間を測って、恋人のことを思い出して辛い感情に浸るのです。
この時間は、15分でも30分でも自分で決めたらいいでしょう。
だいたいの人はこの提案をすると、まず「そんな辛いことできない」と言います。
わざわざ自ら辛いことを体験するのですから。
でもよく考えてみてください。
思い出さないでおこうとしても思い出してしまうのです。
それが1日の中で数時間をも費やしている人もいるのです。
そう考えたら、1日の中で15分 30分使ったとしてもたいしたことはありません。
この方法の意図は強制的に思い出させて、ネガティブな感情に慣れさせ、その記憶を手放させることにあります。
絶対に住めないと思うぐらい汚い部屋に監禁されたとしましょう。
最初は横になることもできず吐き気がしたとしても、そこにいるしか選択肢がないのであれば、数日も経てばその環境に慣れてくるものです。
しまいには、普通に寝て、食事もとれるようになるでしょう。
どんなに辛いことであっても慣れてくるのが、人間の本能の素晴らしいところです。
そして、こっちがメインの意図になります。
人間は強制されることを嫌がり、面倒くさいことを嫌がる生き物です。
時間を決めて「思い出さなければいけない」とやると、その内に面倒くさくなって思い出すことを手放していくものです。
いつしか、ふと思い出すことはあっても、辛い感情に囚われることはなくなるでしょう。
ただし、この方法は中途半端にやると逆効果になる場合があります。
2～3日やってみて辛いから止めてしまうと、その感情が強化される可能性があるのです。
やる場合は、最低でも2週間ぐらい継続することをお勧めします。
過去から未来へ意識を向ける
このような感情に巻き込まれているときは、過去に意識を向けてしまうものです。
そして、付き合っているときは嫌な部分もあったはずなのに、その部分は考えずに過去を美化する傾向にあります。
・恋人と〇〇にデートしたときは楽しかった
・恋人にこんなことをしてもらった
・〇〇なところが良かった
多くの人は経験あると思いますが、現状が辛いと「あのときは良かった」と過去を振り返りますよね。
でも、現実的に復活するのが無理な場合は、過去に囚われても意味がありません。
その恋人と付き合ったことによって、本人の経験になっていますし、今後の恋愛に生かすことができます。
未来に意識を向けることによって、その恋愛も無駄ではなかったと思えるようになります。
そうすると、辛いと思っていた恋愛も価値あるものとなるでしょう。
残念ながら催眠療法で魔法のように記憶を消すことはできませんが、このように視点を変えていくお手伝いはできます。
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