なぜ催眠療法士は催眠術を習得したほうがいいのか?

 

 十数年前に第一次 催眠療法ブームがありました。ブライアン・L・ワイス博士の前世療法が火付けとなりました。当日のスピリチュアルブームにも乗って、前世退行催眠・前世療法をメインとした催眠療法士が一気に増えました。そして現在、あの頃に催眠療法を始めた人のほとんどはいなくなりました。現在も活動を続けているのは、独自のやり方を確立して、結果を出している人なのではないかと思います。

私は、そろそろ第二次 催眠療法ブームが来るのではないかと予想しています。これは第一次ブームとは全く違う要素で起こると思っています。それは働き方や働くことの価値観が変わり、独立・開業する人が年々増えているからです。実際、催眠療法に限らず、様々なセラピー、コーチング、コンサルなど、独立・開業しやすいジャンルのセミナーは、全国各地で開催されて年々その数も増えています。当スクールの傾向としては、これまでは「催眠療法を仕事にしたい」と学ぶ人が多かったのですが、ここ数年は、現在活動しているジャンルとの融合、新たなメニューを作る、ことを目的として学ぶ人が増えています。今後もこの傾向は続いていくでしょうし、どこかで火がつくのではないかと思います。どちらにしても今後ますます催眠療法士は増えていくでしょう。そうすると、実力と結果が伴わなければ、活動を続けるのは難しくなるのは自明の理です。

 

 私は催眠療法士は催眠術も習得しておくことを推奨しています。(※ここでの催眠術は現象を起こすことを目的としたショー催眠としておきます)
私自身、催眠術師と催眠心理療法士を肩書きとして活動をしてきたというのもありますが(※現在は催眠心理師)、実際どちらの活動もしていると、双方に相乗効果があると強く思います。特に催眠療法の場合は、催眠術の技術と考え方が役に立っています。

催眠療法の現場では、よく「催眠療法」と「催眠術」を対比して説明されています。「催眠術は操られるように見える、催眠療法は操るものではない」「催眠術は見せ物、催眠療法をあなたのために行う」。まるで催眠術が「悪」であり、催眠療法が「善」である、という説明をしている人もいます。クライエントを安心させる目的だと思いますが、ではその人が催眠術を習得しているかというと、必ずしもそうではありません。できないことで本質的な話はできません。もし催眠術を習得していたら、もっとセラピーの効果を高めるような説明もできるようになります。

 

催眠術の習得を推奨する一番の理由は、催眠の本質を掴むことができる」からです。「催眠とは何なのか?」を自分なりに理解することです。

人は言葉だけで幻覚をも見せることができる。

これを理解して出来るようになることで、催眠の本質が掴みやすいのです。

 

催眠術は道具を使わずに言葉だけで、様々な現象を起こすことができます。

・椅子から立てない
・声が出ない
・水がお酒になる
・マジックを転がすと笑いが止まらない
・名前を思い出せない
・音楽が鳴ると指揮者になる

そして最も深い催眠状態で起こる現象が「幻覚」です。

・目の前に好きな芸能人が現れる
・亡くなった人と話ができる
・術者の姿が見えなくなる

現象にこだわった催眠術をやっていると、いかに人は言葉によって影響を受けているか、「言葉の力」を目の当たりにします。そうすると同じ暗示を入れるにしても、自信をもって誘導することができます。自信を持って誘導するからこそ、より強力な暗示を入れることができます。催眠療法でこれを理解していないと、いくら良い暗示を与えたとしても効果は小さくなってしまうでしょう。これだけでも推奨する十分な理由になります。

 

それでは「なぜ催眠療法士は催眠術を習得したほうがいいのか」をさらに具体的に説明していきましょう。

 

私が辿ってきた催眠道

 今回の内容をより納得してもらうためには、実際に私が辿ってきた道を知ってもらったほうが良いと思います。順風満帆ではなかった私の催眠道。試行錯誤しながらどのように現在に至っているのか、をまずお話します。

①催眠療法を学ぶ

 まず私が学んだのは催眠療法でした。当日の私は、催眠術と催眠療法の違いがよく分かっていませんでした。関西でスクールをやっている所を一通り調べて、その1つのスクールに通い始めました。基礎・中級・上級コースとあり、料金は80万円程度でした。1年程スクールに通ったのですが、「本当に自分が人に催眠療法なんてできるのか?」と、疑問というか違和感を常に感じていました。実際、学んだ催眠誘導ができる程度で、催眠療法がどういうものなのかもよく分かっていませんでした。今から考えても、全く人に行えるレベルではありませんでした。

「このままでは、ここまでの学びが無駄になる」

②催眠術を学ぶ

 
 1年経った頃には、ようやく催眠術と催眠療法の違いが分かるようになりました。そこで私は「本格的に催眠術を学ぼう」と思いました。テレビで見る魔法のような催眠術を学ぶことで、道が開けると直感したのです。そして、催眠術の師である南裕先生と出会うことができました。

この直感は間違いなく正しい方向に導いてくれたと言えます。なぜなら、この出会いがなければ、開業していなかったかもしれませんし、開業していても、おそらく数年で活動を止めていたでしょう。

私はスクールに通ってから6ヶ月程で、催眠術を習得することができました。そして、催眠療法の学びが無駄ではなかったと思うことができました。いくつか催眠療法の講座は受講しましたが、すっかり催眠術の魅力にとりつかれて、2年半程は催眠術ばかりやっていました。

③催眠術で開業

 催眠術の楽しさにハマってしまった私は、「この楽しい世界をもっと広めたい」と思いました。そして2006年に、京都で関西発の本格的な催眠術師養成スクールを開校しました。0からのスタートでしたが、少しずつ催眠術を広めていき、関西ではパイオニア的な存在になることができました。

④催眠療法を始める

 催眠術の活動を始めてから2年程経った頃、「そろそろ催眠療法をやってみよう」と思いました。それまで勉強も続けていたのですが、何より「今の自分ならできる」と思えるようになりました。そして準備期間を経て、催眠療法をスタートしました。

最初は基本的な催眠療法のやり方でやっていたのですが、少しずつ催眠術の要素を取り入れて、様々なセラピーを取り入れて、独自のやり方を確立できました「掛ける」と「解く」の催眠療法ができるようになり、被験性・被暗示性に関係なく、様々な悩みに対応できるようになりました。スタートしてから2年程の頃です。掛ける」催眠術を徹底的にやってきたらこそ、「解く」という考え方にたどり着いたと思います。

 

 そして現在まで、催眠術と催眠療法の両方で活動してきました。両方をやっている人はあまりいない事もあり、今では全国各地からスクールを受講して頂けるようになりました。ここ最近は、「人生を 自由に  楽しく  我がままに  生きる」をテーマに、催眠の枠を超えて活動をしています。

遠回りをしながらも今まで活動してきて思うことがあります。

「無駄なことは一つもなかった」
「催眠術に出会えて本当に良かった」

 

催眠術と催眠療法の違い

 催眠療法士は、催眠術と催眠療法の違いを理解しておいたほうがいいでしょう。対比して説明する場合も、この違いを明確にクライエントに伝えることができると、説得力が増します。そもそもセラピーを受けるクライエントで、違いが分かっている人はほとんどいないと思ってください。だからこそ、素人の視点に立って、シンプルに分かりやすく説明する必要もあります。

しかしながら、この違いは簡単に説明できそうで、実は奥が深いものであります。私自身は、自分なりに明確に説明できるようになるまでに、学び始めてから約5年程かかりました。また、実際に両方やっていないと本質的な説明をすることは難しいでしょう。

これからいくつかのポイントに絞って説明していきますが、間違ってほしくないのは、どちらが優れているかということではありません。そもそも目的が違いますので、考え方も誘導方法も違います。これは、古典催眠(催眠術)現代催眠・エリクソン催眠でもよくあることです。現代催眠・エリクソン催眠をやっている人は、古典催眠を下に見がちです。「自分の方がレベルの高いことをやっている」と思っているのでしょうか。ハッキリ言えば、古典催眠をキッチリと身に付けていない人が、そういう発言をします。少なくとも、現代催眠もエリクソン催眠も、古典催眠がベースにあると理解している人は、そんな発言はしないと思います。もう一度言いますが、目的が違うのでどちらが優れているとかではありません。

最も良いのは、目的に合わせて、相手に合わせて、状況に合わせて、そのときの相手の反応に合わせて、見極めをしながら、誘導法を臨機応変に変えていくことです。まあこれがエリクソン催眠の根っこにある大事な考え方なんですけどね・・・どれも身に付けておくのが一番ですし、どれも極めることの難しさは同じです。

①目的

 一番の違いは目的です。目的が違うからこそ、この後のポイントも変わってきます。

●催眠術
様々な催眠現象を起こす、エンターテインメント性。

●催眠療法
心の悩みや症状を改善・解決する、コーチングであればより早く確実に目標を達成する。催眠現象を起こす必要性はない。

②誘導対象者

●催眠術
催眠術は「掛かりやすい人」「掛かりにくい人」がハッキリしています。1対1で誘導することもありますが、複数に誘導する(ショーなどの)場合は、掛かりやすい人を見極めて掛かりやすい人を優先に誘導していきます。掛からなければ絵にならないですから。この見極め力が術者のレベルの高さでもあります。

※ここでの「掛かりやすい人」は、催眠現象が起こりやすい人。

●催眠療法
催眠療法では被験性が高い人かどうかで選ぶことはできません。被験性・被暗示性が高いクライエントばかりならいいのですが、実際はそんな都合良くはいきません。催眠療法士はまずここで壁にぶち当たります。私自身もそうでした。被験性・被暗示性に頼ったやり方では限界があるのです。そこからどのように対応していくかは、経験を積み重ねて、学び続けていくことで、自分なりのやり方を確立することができるでしょう。

※被験性とは催眠状態の深まりやすさ、催眠術の掛かりやすさ。被暗示性とは暗示の入りやすさ。催眠療法の場合は、私独自の考え方でこの二つを分けています。

③誘導時間

●催眠術
催眠術はあまり時間をかけると間延びしてしまうので、基本的には短時間で誘導して様々な催眠現象を起こしていきます。ある程度できるようになれば、15分程度で幻覚を見せることができるようになります。さらにレベルを上げていけば、3分程度で幻覚を見せることも可能です。それだけ催眠状態を一気に深めるテクニックを使っているのです。

●催眠療法
催眠療法は時間に余裕もあるので、じっくりと時間をかけて催眠誘導を行うことができます。そうすることで、着実に催眠状態を深めていきます。

④誘導のポイント

●催眠術
なぜ催眠術では短時間で深い催眠状態に誘導できるのか?の説明にもなるのですが、催眠術では「リラックス」と「緊張」をうまく使いながら誘導していきます。この繰り返しが、一気に催眠状態を深めるための一つのポイントになります。

●催眠療法
催眠療法では基本的に「リラックス」させることによって、催眠状態を深めていきます。

⑤催眠深度

●催眠術
様々な催眠現象を起こしていくためには、より深い催眠状態へ誘導する必要があります。幻覚を見ているときは、その人にとって最も深い催眠状態になっています。

●催眠療法
個人的な意見でもあります。催眠状態が深いことに越したことはありませんが、中程度の深さで十分 催眠療法を行えます。「悩みや症状があるのは自分に悪い催眠を掛けている、だからすでに催眠に掛かっている、ならばその催眠を解いていけば解決する」、という「解く」考え方でやるのであれば、催眠深度は関係ありません。

 

 詳しく説明すると長くなるのでシンプルにまとめました。何となくでも違いが分かったでしょうか?目的が違うからこそ、その他のポイントも変わってきます。そしてこの違いは、実際にやっている人でなければ、本質的な理解はできないでしょうし、説明するのも難しいでしょう。

 

現場での活用術

 催眠療法の現場で、実際にどのように催眠術を生かすことができるのか?を説明していきます。

①催眠現象を起こすことで信頼度・効果が増す

 催眠療法で長時間リラクゼーションの誘導を行えば、人は確実に催眠状態に入ります。これは術者にとっては当たり前に理解していることだと思います。では、こういう言葉をクライエントから言われたことはないでしょうか?

「私は催眠に掛かっているのでしょうか?」

私はやり始めの頃によく言われました。でもよく考えたら当然のことだと思います。クライエントにとっては、催眠について知りませんし、催眠状態がどういう状態なのかを知りません。テレビで見る催眠術と催眠療法の違いも理解していません。多くの人にとっては特別な世界であり、特別な体験をできると思っています。そもそも催眠があるかどうかも半信半疑だったりします。そこでリラクゼーションの誘導で催眠状態が深まり、体が弛緩したり、頭がボーっとしても、「自分は催眠に掛かった」と必ずしも思ってもらえません。

そうすると、催眠療法の効果が下がってしまいます。なぜなら、自分が催眠に掛かっていないと思っていたら、眠療法の効果を信じることができないからです。催眠を信じるからこそ、暗示が強化され、効果が増すのです。

ここで催眠術が生かせます。催眠術が得意とする催眠現象を起こしてあげればいいのです。そうすると「催眠はある」と信じてもらえます。ここでは初期誘導で行うような催眠現象でかまいません。何か一つでも催眠現象を起こすと、顔の表情が変わって、そこから一気に催眠状態が深まっていく人も多くいます。

②誘導時間を短縮できる

 催眠術で得意とするのが短時間で催眠状態を深められることです。これを使わない手はありません。実を言うと、私が行う催眠療法では、催眠誘導よりもカウンセリングを重要視しています。じっくりと話を聴いて問題を解決するためのヒントや答えを見つけていくことが、短期間での解決に繋がるからです。2時間のセラピーで、1時間半がカウンセリング、残り30分で催眠誘導、なんてこともよくあります。私が求める深度まで誘導するのに、催眠術の技術を使って時間の短縮をしているのです。

③タイプの見極めをして展開を変えられる

 催眠術において最も重要なスキルがあります。それが「見極め力」です。短時間で様々な催眠現象を起こすことを目指してやり続けていると、自然に身に付いていくものでもあります。

催眠術は大きく三つのポイントで掛けています。

●催眠状態を深める
●暗示を入れる
●催眠現象を起こす

そして人によって、

●催眠状態の深まりやすさ
●暗示の入りやすさ
●催眠現象の起こりやすさ

が違います。催眠現象にこだわるからこそ、催眠療法では身に付かない見極め力がついていきます。

同じ流れとやり方で催眠療法を行うよりも、その人の特性を見極めて、その特性を生かしたやり方で展開を変えていけば、より効果が高まります。

④自信をもって催眠療法を行える

 「催眠療法をやっていて、本当にこれで効果があるのか自信ない」

これは実際に、催眠療法士から私が相談されることです。驚いた人もいるでしょうし、「実は私も・・・」なんて催眠療法士もいるかと思います。特に、催眠誘導をして暗示を入れる、という基本的なやり方をしている人はそうなのかもしれません。

でもこの気持ちも分かります。催眠術のように催眠現象が起こるかどうかハッキリ分かればいいですが、そのときは「良かった」と言ってもらえても、実際に効果が分かるのは、当日ではなくその先だからです。でも、それを考えるよりも、催眠療法士が自信をもって催眠療法を行うことが大切です。そして、あとはクライエントの可能性を信じることです。

最初に書いたことを思い出してください。

人は言葉だけで幻覚をも見せることができる。

これが何を意味するのか?
いかに人が言葉に影響を受けているかであり、言葉には力がある、ということです。催眠術をやっていると、その「言葉の力」を信じることができるようになります。そして信じるからこそ、同じ言葉であっても力が宿るのです。

それなのに、催眠療法士が自信なくやっていたらどうなるでしょうか?言葉は目に見えるものではなく感じるものです。催眠療法士が発する言葉や暗示を、クライエントは敏感に感じ取っているということを忘れてはいけません。

 

 

 私が、催眠療法士が催眠術を習得することをお勧めする理由を理解して頂けたでしょうか?そして、その逆もまた然りです。どちらも知ることは、ある意味二つの視点をもてることにもなります。一つの視点では見えないことでも、二つの視点だと見えることがあります。そして状況に合わせて、どちらの技術と考え方も使えば、相手が得るものも大きくなることでしょう。

 

 

催眠術
http://mindcreate.com/
催眠心理療法
http://saiminsinri.com/

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